肥満は友人を介して広がる?

大変興味深い、また、そういうこともあるのか、と思わせる研究が発表されました。New England Journal of Medicine 2007年7月26日号 (2007; 357: 370-390)に発表されたものです。

アメリカではこの30年間に肥満の人の人口が大変増えており、その原因がいろいろと研究されてきました。食生活の変化、運動不足などが主な原因と考えられていますが、今回の論文の研究テーマは、一人の体重増加が、その人の友人、兄弟、配偶者、ご近所などに影響を及ぼすかどうかを検討したものです.

1971年から2003年の間に行われた、フラミンガム研究の一環です。

その研究結果によると、BMI 30以上の人がいると、その人の影響は徐々に広がり、つまり、周りにも肥満の人が増えるようになり、その影響はその人と直接つながりのある人だけでなく、その人の友達の友達の友達にまで影響は広がって行くというのです。そして、友人が肥満になると、肥満になる可能性は57%増える(肥満の友人がいなかった場合に比べ、肥満の友人がいると肥満になる可能性は1.57倍になる)ということです。また、成人の兄弟、姉妹間では40%の増加、配偶者間では37%の増加となるというのです。また、ただ近所にいるだけでは影響はほとんどないということです.

つまり、肥満になりやすさは、「ご近所づきあい」よりも、「離れていても親密なつき合い」のほうが影響力は大きいというのです。また、特に、同性の友人、同性の兄弟、姉妹の影響が大きいこともわかりました。配偶者は共有するものが大きいはずですが、肥満については友人ほど影響力はないようです。

よくこんなことが調べられたものだと思いますが、多くの調査を集積した結果のようです。そして、同誌のホームページには、この論文の中で使われている肥満の人のつながりの広がって行く様子の図がアニメーションで見ることができますので、ご覧になってみてください。

いくらわかっていても、仲のいい友人から「まあちょっとくらいいいだろ?」などといわれるとつい気が緩んでしまい、食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしてしまったりすることが繰り返されると、肥満が広がるといったことになるのかもしれません。

論文の中で著者らは、このネットワークを逆に利用して、健康生活の啓蒙に役立てるべきだと述べています。「人がつながれば、健康もつながる」と述べています。ビリーズブートキャンプ(ビリー・ブランクス氏によるシェイプアップトレーニングのビデオ)が爆発的に売れているそうです(実は私も買ってハマッてます)が、こういう健康によいものが広がることもあるという一例ですので、確かに、こういった人のつながりというネットワークをいい方向に利用したいものです。

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