ストレスとメタボリックシンドローム

ストレスは体によくない、とはよくいわれることですが、心疾患、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、喘息、膠原病などストレスによって病気が悪化すると考えられている疾患が多くあります。メタボリックシンドロームは内蔵脂肪蓄積を伴い、インスリン抵抗性という病態を有し、高血圧、糖尿病、高脂血症などの発症要因となることが知られています。今回発表された論文は、ストレスがメタボリックシンドロームの発症要因となるかどうかを検討したものです。British Medical Journal 2006年3月4日号(332, 521-524, 2006)に掲載されました。

35歳〜55歳の男女、10308名の英国人について、1985年から1999年までの平均14年間の追跡調査を行っています。14年間に4回、職場でのストレスの程度を質問表によって調査を行っています。

メタボリックシンドロームの診断は日本の診断基準と若干異なりますが、大体同じと見てよいだろうと思います。

職場でのストレスについては、仕事で求められていることに関する質問、仕事の自由度に関する質問によって判定しています。この質問表は、職場で孤立していて仕事の緊張度が高い状態がもっともストレスが大きく、心疾患のリスクももっとも大きいと考えられていて、そのような考えに基づいて考えられたものだそうです。そして、論文の筆者らは、「慢性の職場のストレス」を14年間の75%以上の時間を緊張状態で過ごしていた場合と定義しています。

結果は、ストレスがないと判定された人たちがメタボリックシンドロームになる頻度を1.00とした場合、ストレスが1つ、2つ、3つ以上の人たち(もともと肥満のない人たち)について調べると、男性ではそれぞれ、1.12、1.56、2.04、女性ではそれぞれ1.22、1.09、4.69となり、ストレスが多いほどメタボリックシンドロームになりやすく、男性より女性でその傾向は強かったことがわかります。

ストレスがどうしてメタボリックシンドロームの発症要因となるのかはまだわかってはいませんが、ストレスが自律神経や内分泌系に働くためだろうと考えられています。副腎皮質ホルモンの変化により肝臓でのリポタンパクの代謝やインスリン感受性に変化が生じることや、副腎皮質ホルモンのコルチゾールがインスリンの働きを阻害したり、コルチゾールとHDLコレステロール(善玉コレステロール)低下、耐糖能との関連が指摘されています。


ストレスは多くの病気と関連します。メタボリックシンドロームもその一つであることが今回報告されました。ストレスのない社会であることが理想ですが、なかなかそうはいかないようです。職場のストレスからは逃れられないとしたら、次善の策として、休日はゆっくり休んだり、余暇の時間は自分だけの世界を満喫するようにしましょう。気持ちの切り替えを上手にするようにしましょう。(それがなかなか難しいんですが・・・・)

また、定期的な健診などは必ず受けて、少しでも異常があれば早めに病院で相談して下さい。そして、もしメタボリックシンドロームのような異常が見つかったら、少しでも生活習慣を変えられるように生活を工夫してみましょう。

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