早くも流行期に入った新型インフルエンザについて

2009年8月19日、舛添厚生労働大臣は、新型インフルエンザが流行期に入ったことを宣言しました。春先に流行があり、一時沈静化していたものがここに来て急に感染者が増えてきました。その要因について、大臣は「国民の慢心」があるのではないかと述べられましたが、そこまでいうのはちょっと言い過ぎ(国民がかわいそう?)ではないかと思います。新型インフルエンザの流行は、数十年に一度は必ず人類が経験するものです。ほとんどの人が免疫を持っていないウイルスですから、急速に感染が広まるのはやむを得ない現象です。しかし、急速に流行が拡大すると、医療機関がパンクする恐れがあり、そうなると、治療を受けられない人たちが増える結果になりますので、少しでも流行のスピードを遅らせるために、手洗い、うがいなどは心掛けたいものです。

ところで、これまでにわかってきた、新型インフルエンザの情報を整理したいと思います。

感染者は小児から若年者が中心で、ごく軽症から重症な肺炎に至る例までが報告されていますが、多くは、咳、発熱、咽頭痛、倦怠感、頭痛で、中には嘔吐、下痢などの消化器症状を伴う人もいます。心臓病、腎臓病、呼吸器疾患などの基礎疾患がある場合は重症化するケースがあるといわれています。小児では脳症の合併も報告されています。これらの特徴は、季節性インフルエンザと大きく変わるところはありません。しかし、それは、普通の風邪と同じように考えてよいということではなく、季節性インフルエンザ自体が、致死率も高い疾患であることをふまえて対応しなければなりません。しかも、季節性インフルエンザよりも、死亡率は高いことが報告されていますので、基礎疾患のある方は、もしかかった場合は早めに受診して下さい。

診断は、季節性インフルエンザで使っている簡易検査でA型を示しますので、それによって診断が可能ですが、季節性インフルエンザより感度が低い(検査で陽性とならない場合がある)、ということがわかっています。このあたりは現場でも混乱の原因となることが心配されます。

治療については、一定期間で特に合併症もなく治りますので、ほとんどの場合入院も抗ウイルス薬も必要ないといわれています。解熱剤の使用は必要に応じて認められていますが、小児ではアスピリンなどは勧められず、アセトアミノフェン(アルピニ、アンヒバ、カロナール、コカールなど)がよいとされています。妊婦の場合は重症化する恐れがあるといわれていますので、抗ウイルス薬の適応となります。抗ウイルス薬としては、タミフル、リレンザの有効性が認められています。タミフル耐性ウイルスに変化することが心配されていますが、今のところ(2009年8月末時点)はタミフルはよく効いているようです。いずれも5日間の使用が必要です。

予防にはうがい、手洗いは重要です。また、特に感染した人がマスクをして、周囲に感染を広めないことも重要です。

医療機関で感染が広まる危険性もありますので、インフルエンザの可能性がある方は、あらかじめ電話で受診する時間などを確認してから受診するようにしてください。

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