気温と心臓発作の関係

夏と比べて冬の方が心臓発作、心筋梗塞などの発症が増えることはよく知られていましたが、どのくらい気温が下がるとどのくらい発作が多くなるのか、といったデータは今までありませんでした。今回紹介する論文は、イギリスで行われた研究で、気温の変化と心臓発作の発生との関係を詳細に検討したものです。

British MedicalJournal2010810日号(BMJ 2010; 341: c3823)に発表されたものです。

イギリスで行われた心筋梗塞の調査の中の研究の一つで、2003年から2006年までの間に心筋梗塞で入院した84,010人を対象に検討されました。発作が起きたときの天候を詳細に検討しました。

その結果、気温が1℃下がると心筋梗塞が2.0%増えるという結果がでました。この気温の変化の影響は、気温の変化があってから28日までは持続し、特に気温が下がり初めて2週間目あたりまでが影響が大きかったということです。また、特に7584歳の、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の既往のある人では特に影響を受けやすかったということです。心筋梗塞の予防のためにはアスピリンがよく使われるのですが、アスピリンを使用していた人の方が、気温の変化は受けにくい傾向はあったということです。イギリスでは年間146,000人の心筋梗塞の発生があると見込まれていますが、論文の著者らの試算では気温が1℃下がると心筋梗塞を起こす人が200人増えると見込まれるそうです。

気温が下がるとなぜ心筋梗塞が増えるのかという点については、気温が下がることによって血圧が上がり、血圧の粘度(血液ドロドロの程度)が上がり、心臓の負担が増えたりすることや、血液の中の白血球の動きの変化や、赤血球数の増加、血液中のコレステロールやフィブリノーゲンの増加など、いずれも血液が固まりやすくなるような現象が起こるからだろうと考えられています。血小板凝集(血小板が集まって血管が詰まりやすくなる現象)を予防する効果のあるアスピリンを服用している人の方が気温の変化の影響を受けにくかった、というのもこれらの機序が関係していることを示唆しています。イギリスでは、寒くなると、高齢者には電話で、暖かくして、家の中にいるようにというアドバイスをするのだそうです。

今年の夏(2010年)は熱中症になるお年寄りが多かったのですが、クーラーをかけるのが贅沢だとかもったいないと考える方が多くいらっしゃいました。冬も暖房もかけずに過ごされる方がいらっしゃるのではないかと思います。気温が下がり始めたら少しでも暖かくして過ごすようにしてください。

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