うがいの科学

夏から秋への季節の変わり目をむかえ、風邪がはやり始めました。風邪の予防にはうがいが効果的です。外から帰ってきたら数回うがいをする。これは基本ですが、さて、どのくらい効果があるものなのでしょう。その科学的根拠を紹介しましょう。

市販されているうがい液で最もよく出回っているのは、イソジンなどのヨード系のうがい液です。ヨードはよく使われる消毒液で、手術の際、皮膚の消毒には必ず使われます。うがい液は7%のヨード希釈液で、これをさらにうすめて使います。2〜4mlを水60mlにうすめて(15〜30倍希釈)使うことになっています。これは使うときにうすめるのが第一のポイントです。

その消毒効果は87.9%といわれています。

ヨードうがい液の、細菌に対する効果、ウイルスに対する効果について報告されているデータは以下のようなものがあります(日本医薬品集2000(第23版)1902-1904)。

うがいに使われる濃度(30倍希釈)のヨードで、細菌を死滅させるのにかかる時間についてのデータ:

主な疾患 菌を死滅させるのにかかる時間
黄色ブドウ球菌 肺炎、扁桃炎、中耳炎など 1分
肺炎球菌 肺炎、髄膜炎など 1分
溶連菌 肺炎、扁桃炎、猩紅熱など 1分
ジフテリア菌 ジフテリア 10分
緑連菌 心内膜炎 15分

ウイルスに対しては、原液、10倍希釈液、100倍希釈液でウイルスを死滅させる効果が得られるのにかかる時間のデータ:
主な疾患 原液 10倍希釈液 100倍希釈液
コクサッキーウイルス 感冒、手足口病、心筋炎など 30秒 5分 5分
エコーウイルス 感冒、無菌性髄膜炎、結膜炎など 30秒 1分 5分
エンテロウイルス 夏かぜ、手足口病、ヘルパンギーナなど 30秒 30秒 30秒

以上のような根拠に基づき、うがいが推奨されています。このデータだけ見ると1分間ずっとうがいをしていなければならないように思いますが、10秒のうがいを6回行えば1分間のうがいと同じです。また、希釈の濃度については濃ければ濃いほどよいように思いますが、あまり濃いと、口の中のあれやびらんの原因となりますので決められた濃度にとどめましょう。また、このデータでは、うがいだけではウイルスを死滅させることはできませんが、体には免疫の働きがあって体に入ったウイルスを死滅させてくれますので、ウイルスを減らすだけでも風邪の予防には十分効果があるのです。

外から帰ってきたら、15〜30倍にうすめたヨードうがい液で10秒間、6回以上うがいする。その科学的根拠に基づき、風邪の予防に心がけましょう。

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