運動能力と寿命の関係

運動能力が心血管系疾患(心筋梗塞、脳卒中など)の重要な予測因子となることが知られていますが、今回発表された論文(New England Journal of Medicine, 346: 793-801, 2002)には運動能力と死亡率、つまり寿命との関係が検討されています。

運動能力をトレッドミル(ベルトコンベア式のウォーキングマシン)によって測定した、6213名の男性について検討しています。観察期間は平均6.2年でした。このうち、3679名は運動テストで異常値が認められたかあるいは、心血管系の既往歴のある人、2534名は運動テストは正常で、心血管系の既往歴もない人たちでした。

1256名が亡くなった時点で検討が行われています。、亡くなった人と生存していた人を年齢層ごとに比較すると、MET(下記参照)で測定した運動能力が死亡率と相関したというのです。これは心血管系の既往歴のある人でもない人でも同じだったというのです。この研究結果ではMETが1上がると生存率が12%上がったという計算になるのだそうです。

WHOの発表

ちょうどこのページを書いていたら、4月4日、世界保健機構(WHO)が現代人の運動不足に警鐘を鳴らす発表を行いました。それによると、世界人口の60〜85%の人が運動不足であり、そして、運動不足が原因で、世界で毎年200万人が死亡している、というのです。栄養過多、喫煙、運動不足の問題を指摘しています。座りがちな生活では死亡率は上昇し、心血管系疾患、糖尿病のリスクは2倍になり、大腸がん、高血圧、骨粗鬆症、高脂血症、うつ病、不安神経症などのリスクも増えると指摘しています。世界健康デー(World Health Day, 2002年4月7日)を機会に人々にこのことを伝えたいとしています。

対策として以下のことを勧めています。

  1. 一日30分の散歩などの軽い運動を行う
  2. 禁煙
  3. バランスのとれた食事を心がける

また、そのために国に対しては以下のことを進めるよう勧告もしています。

  1. 自転車や歩行者が安全に走ったり歩いたりできる環境作り
  2. 公共施設の禁煙
  3. 公園を増やす
  4. 学校や自治体で運動プログラムを推進する

運動を習慣づけ、運動能力を少しずつでも高めていくことによって、健康で過ごすことができるようになるということだと思います。

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