減量後のリバウンドを少なくするために

メタボリック症候群や肥満が、健康に大きな影響を及ぼすことはよく知られています。食事や運動を適切に行い、体重を減らすことがよいことは当然ですが、実際にはある程度の減量に成功しても、しばらくたつとリバウンドが起きてしまうことも事実です。この減量後のリバウンドは健康管理を行う側にとっても重要なテーマであり、多くの研究がなされています。これまでの研究でも、減量に成功した後も様々な方法でモチベーションを高めつづけることが大切であることはわかっています。今回紹介する研究は、減量に成功した後、体重を維持するように働きかける3通りの方法を比較したものです。JAMA米国医師会雑誌 2008年3月12日号(2008, vol 299, No 10, p 1139- 1148)に掲載された論文です。

米国で行われた研究で、高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)を有する1032人の肥満成人を対象としました。まず、食事、運動プログラムの実行によって6か月間で減量を行います。全体としては平均で8.5kgの減量がなされました。ここからこの体重を維持するための方法として3通りのアプローチが行われました。いずれの方法も30か月続け、その効果を比較したものです。3津の方法とは、(1)毎月指導者と面接し、その都度体重を測り、5分から15分かけて指導を受け、さらに4か月に一度は45〜60分のマンツーマンの指導を受けるというもの、(2)双方向性のインターネットを利用した指導で、個人個人の目標や現在の体重を入力して適切な方法をウェブページ上で確認できるというもの、(3)重要な事柄が書かれたパンフレットを渡され、自分でコントロールする、という以上の3つの方法が比較されました。

その結果、いずれのグループもある程度のリバウンドが認められました。(1)の方法では平均+4.0kg、(2)の方法では平均+5.2kg、(3)の方法では平均+5.5kgのリバウンドが認められました。また、最初の減量に入る前に比べて4kg以上の減量が維持できていた人の割合は、(1)のグループで45.2%、(2)のグループで40.8%、(3)のグループで39.5%でした。つまり、リバウンドの予防効果としては、(1)が最もよく、次が(2)、そして(3)の方法と続いています。

いろいろな解釈が考えられるだろうと思います。インターネットの普及で、個人個人の達成度を確認し、モチベーションを高めるために、各人にカスタマイズされたウェブページというのは大変有効な手段だと思いますし、実際、その効果は単にパンフレットを渡して読んでおいてもらうというものよりもよいことは示されました。しかし、インターネットにアクセスしなければ、それらの情報は有効に機能しません。その点が欠点かもしれません。一方、定期的な面接は、今回の研究では最も有効だったわけですが、一人一人に対して有効なアドバイスができたり、結果がよければほめることなどもでき、モチベーションを高めるのには最も有効だったのだろうと推測できます。しかし、この面接を受けるために、病院に行かなければならないという不便さはあると思います。やはり、人間対人間で、顔を見ながら話をして、モチベーションを高く持ち続けることが大切なのでしょう。

肥満の人が体重を1kg減らすと、収縮期血圧は1〜2.4mmHg下がるといわれており、また、糖尿病の発症も16%減るといわれています。ですから減量を維持することはとても大切なのです。

当院では特別な減量プログラムなどは行ってはいませんが、減量に挑戦し、維持しようという方は積極的に支援していきたいと考えております。栄養指導も行っております。

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