ウエストナイルウイルスについて

2002年9月25日、朝日新聞夕刊で報道されましたように、アメリカで流行が問題となっているウエストナイルウイルスが日本にも上陸する可能性が指摘されています。今回はウエストナイルウイルスについて解説します。

アメリカにおけるウエストナイルウイルスは、1999年、ニューヨークで発見されてから徐々に広がりを見せ、2001年にはアメリカ東部に、2002年には西海岸のカリフォルニア州にまで広がっています。患者数も爆発的に増えており、アメリカでは猛威をふるっています。アメリカCDC(疾病管理センター)の発表によると、以下に示すように8月から急速に患者数、および死亡患者数が増えています。

9月26日時点、患者2206名、死亡108名
9月23日時点、患者1963名、死亡99名
9月12日時点、患者1295名、死亡54名
9月4日時点、患者673名、死亡32名
8月14日時点、患者156名

原因は?

この病気は、蚊がウイルスを媒介することによって感染するといわれています。蚊が媒介する病気としては日本脳炎が知られていますが、ウエストナイルウイルスは日本脳炎ウイルスと同じ仲間のウイルスといわれています。

ウエストナイルウイルスは蚊からヒト以外の動物にも感染するため、鳥やリス、馬などにも発病します。ニューヨークで患者が発見される前にはカラスの死骸が大量に発生していたといわれています。

蚊がヒトの皮膚を刺したときに、蚊の唾液からヒトにウイルスが入って感染するのですが、多くの場合、発病するほどのウイルス量はないため、ほとんどのヒトは発病しません。しかし、ウイルスに感染したヒトや動物が新たな感染源となる可能性はありますが、ヒトからヒトへの直接の感染(接触などによる感染)は起こりません。

症状は?

発病する場合の潜伏期間は3〜15日といわれています。

症状は、発熱、頭痛、関節痛など、いわゆる感冒様症状です。しかしまれに重症化することがあり、脳炎を起こすと致死的な場合があります。脳炎の症状は、頭痛、高熱、意識障害、麻痺、けいれんなどです。

脳炎になった患者さんは50歳以上の人が多いといわれています。

アメリカの統計では、感染者150人あたり1名が重症化しており、入院した例の12%は致死的だったとされています。

1999年にニューヨークで行った調査では住民の2.6%が感染していたとされています。従って、ほとんどの感染者は発病はしていないことがわかります。また、蚊に刺されてもそのほとんどはウエストナイルウイルスの感染にはならないということもわかっています。発病のリスクが高いのは、抵抗力の低下した高齢者が中心といわれています。

治療は?

特効薬やワクチンはなく、対症療法が中心で、症状に応じて、入院、点滴、二次感染の予防として抗生物質の投与などが行われます。

予防は?

ワクチンはまだありません。したがって今できる予防は、蚊に刺されないこと。そのためには防虫スプレーを使ったり、長袖の服を着ることなどが推奨されています。次に、蚊の繁殖を防ぐこと。従って、植木鉢やバケツの水などは空にしておくようにすることなどが重要です。また、アメリカでは、鳥などの動物の死骸が見つかったら報告するよう呼びかけられています。

日本では?

飛行機でウイルスを持った蚊が運ばれたことによってアメリカ国内で広がったと考えられており、日本にも入ってくる可能性は否定できません。

日本ではまだ(2002年9月末時点)感染者や発病した人の報告はありませんが、我が国にいつ入ってきてもおかしくない状況なのだそうです。厚生労働省では、ウエストナイルウイルス感染症の流行地域からの帰国者で、本症が疑われる場合には、検査など迅速に対応する体制になっているようです。

熱や頭痛が続くときは無理はせずまず医療機関を受診しましょう。

<参考文献、Webサイト>

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