埼玉県障害難病団体協議会、難病患者家族会での講演後質疑応答のまとめ
2008年9月27日(土)〜28日(日)の2日間、埼玉県障害難病団体協議会の難病患者家族会に参加し、28日には「よい”眠り”のために」というタイトルでお話しをさせて頂きました。講演の内容は、以前当院の第22回健康講座(こちら)で行ったものとほぼ同じです。ここには講演後の質疑応答を掲載させて頂きます。
(宿泊した富士桜莊から見た富士山)
質疑応答:
- 寝るときにアイスノンなどで頭を冷やすとよく眠れると聞いたのですが本当でしょうか?
- お風呂に入ってからだが暖まって、そのあと体温が下がってくると眠くなってくるということはありますが、アイスノンなどで冷やすと同じような効果が得られるのかどうかはわかりません。あまり冷やしすぎると肩こりの原因などにもなるでしょうし・・・夏の暑い夜でしたら効果はあるのかもしれませんね。
-
アルコールと肝臓は関係がありますし、アルコールと睡眠にも関係があるようですが、肝臓と睡眠とは関係はありますか?
-
- 肝臓と睡眠の直接の関係ということよりも肝臓でもアルコールの代謝が関係があるのだと思います。もちろん肝炎や肝硬変などではだるくなったり眠くなったりすることはあります。
-
C型肝炎でインターフェロン療法を受けました。その際に、むずむず足症候群になり、インターフェロン療法が終わってもまだそれが残っていて、アモバンという薬を飲んでやっと眠れるようになりました。これは、睡眠剤なのですか、睡眠導入薬なのでしょうか?
- インターフェロンの副作用で、うつやむずむず足症候群などになることはあり、不眠で悩まれる方は多いようです。アモバンは、薬の分類上は睡眠導入薬に入ります。作用時間も長くはなく、睡眠に入るところを助けてくれる薬です。インターフェロン療法が終わって、むずむず足症候群がだんだん軽くなってきたら、少しずつアモバンも必要なくなってくると思いますので、今なさっているように、半錠にしたり、今回のような旅行の時だけ服用するなどの様な使い方でよいかと思います。
-
先日、アンチエイジングの本を読んでいたら、一日8時間の睡眠で一週間に56時間寝るようにするのがいいとかいてありましたが。
- 睡眠不足がよくないとわかってはいても睡眠時間が短くなることはあるでしょう。要は、睡眠不足を続けないことが大切で、どこかでしっかり眠る日を作ることが大切です。その本でいいたいことは、きっとそういう意味だと思います。また、一日8時間の睡眠にこだわることはなく、日中眠くならない睡眠がとれていれば睡眠時間は足りている、と考えて下さい。
-
よく眠れるためのサプリメントに葉酸が入っていました。リウマトレックスを飲んでいますが、葉酸を摂るのはよくないと聞きました。リウマトレックスと一緒にフォリアミンも飲んでいて、フォリアミンは葉酸だそうですが、そのあたりの関係がよくわかりません。
- 葉酸は細胞分裂に必要な物質で、リウマトレックスはその葉酸の働きを抑えることによって、リウマチの炎症細胞の活動を抑えようという薬です。また、リウマトレックスには肝機能障害や口内炎の副作用があります。これは、リウマトレックスによる葉酸の作用抑制により起こる副作用です。葉酸をたくさん摂ってしまうとリウマトレックスの作用が低下してしまいますから、サプリメントなどで葉酸を摂ることは気をつけないといけません。一方、フォリアミンをリウマトレックスを飲んでから48時間後に1回か2回だけ服用すると、リウマトレックスの副作用は抑え、里馬とれ楠の作用は低下させない、といわれていて、副作用予防のためにフォリアミンをそのような使い方で飲むわけです。食べ物に含まれる葉酸はごく微量ですから、食べ物まで気にする必要はありませんが、サプリメントだけある程度の量が含まれていますので、葉酸を含むサプリメントは避けた方がよいでしょう。
-
夜間の頻尿で悩んでいます。4-5回トイレに起きます。寝る前にお茶を飲んだりするともっと多くなります。過活動膀胱というのもあると聞きましたがそれなのでしょうか。日中は頻尿は全くありません。漢方薬を飲んでいて、寝る前にも漢方薬を飲んでいます。
- 夜間頻尿の悩みは結構多くの方が抱えていて、いわゆる過活動膀胱が原因のこともありますが、夜間だけの頻尿の場合は眠りが浅い場合もあります。特にお茶にはカフェインが入っていて、覚醒作用のために眠りも浅くなりますし、利尿作用のために飲んだ水分量以上に尿が出ますので、よけい夜間頻尿にはなるでしょう。熟睡感がない、日中も眠いというようでしたら睡眠を助ける薬は少し使ってもよいと思います。漢方薬も種類によっては利尿作用が多少ありますから、少し飲む時間を早くしてみてはどうでしょうか。
-
ホットミルクを飲むとよく眠れるのですが、太るのではないか心配です。
- ホットミルクを飲むとよく眠れるという方は確かに多いようです。体温が少し上がってそこから下がってきたときに眠気が来るのでしょう。また、空きっ腹よりはちょっとおなかに入っていた方が寝付きやすいということもあるのでしょう。ただ、たしかにカロリーも脂肪もありますし、寝る前の食事は太りやすくなります。一日のカロリーと、バランスを考えて、低脂肪乳にするなど工夫して、寝る前に牛乳を摂る余裕を残して飲めばよいのではないかと思います。
-
寝ている間に横向きで寝たりすると足がしびれたりします。姿勢を直せば治りますが、それはむずむず足症候群なのでしょうか。
- 寝ている間に圧迫されたり、冷えたりするとしびれることはあります。また、腕を上げて寝てしまったりすると腕がしびれたりします。姿勢を変えて暖めたりもんだりすれば治るようであれば心配ありません。また、そのようなしびれや、寝ている間のこむら返りなどは、むずむず足症候群とは異なります。
-
朝、太陽の日を浴びると体内時計がリセットされるということですが、長い時間浴びないといけないのですか?毎朝ラジオ体操をしていますが、それで十分ですか?
- 目を覚ますためには太陽の光を浴びたり、朝ご飯をしっかり食べることが大事です。太陽の光を浴びるといっても、長い時間日光浴をする必要はなく、ラジオ体操などで体を動かして、体が目覚めればそれで十分です。
-
寝るときは真っ暗な方がいいのですか。真っ暗はちょっと不安な気もするのですが。
- 基本的には暗くした方が睡眠にはいいです。ただ、確かに不安や、夜中目が覚めてトイレに行くときのことなどを考えるとちょっとは明かりがある方が安心という方はいるでしょう。その場合は、直接目に入ってこない程度の、弱い明かりを足下を照らす程度にしておくのがよいかと思います。
-
毎朝一杯の水を飲むようにしていますが、それと体内時計のリセットとは関係がありますか?
- 体内時計のリセットということはまだよくわかっていないので、はっきりとはわかりませんが、朝の光を浴びたり、朝食を摂ったりして体を目覚めさせることがよいので、水を飲むのもよいことでしょう。また、朝は、血液が濃くなっていますので、朝、水を飲むのは理にかなったことでもありますので、そのような習慣は続けた方がよいでしょう。
-
ナルコレプシーという病名が出てきましたがどんな病気ですか?会議中よく眠る人がいるのですが。
- 日中突然強い眠気の発作がおそってくる病気で、非常にまれなものです。情動脱力発作という症状を伴うこともあります。会議中よく眠るというだけで、この病気とはいえないと思います。
-
寝るときはどんな姿勢がいいのですか?心臓を下にしてはいけないでしょうか。
- やはり全身の筋肉をリラックスさせられる体位として、仰向けがいいでしょう。腰痛などで横向きになれているのであればそれでもいいでしょう。左下にして眠ったからといって心臓の働きによくないというようなことはありません。
-
食べたあとすぐ横になると牛になる、などといいますが、体にはよくないのでしょうか?
- だらしないというような意味で言われていることだと思いますが、体のためには食べたあとすぐ動くよりは休んだ方が消化にはいいです。
-
足を高くして寝た方がいいのですか?
- 足がむくんでいるようなときはその方がいいでしょう。あと、腰が痛いようなときは、仰向けで、膝の下にちょっと枕を入れたりすると寝やすいようです。
-
体の炎症が起きているときと、おさまっているときとでは睡眠時間は違いますか?私の場合は紅斑が出ると眠くなってしまいます。
- 炎症が起きているときは体は大変消耗しています。睡眠時間は多くとった方がいいです。昼間寝てしまっても夜も眠れますから、一日体を休めた方がいいでしょう。紅斑が出ているということは炎症が起きていることを表しているということだと思います。
-
私は枕を2段重ねにして、眠っている間に横を向くと高さを調節したりして寝るのが習慣となっていますが、それでいいでしょうか。
- 枕があまり高いとよくないというお話しをしましたが、いびきの原因となることが多いということでお話ししました。寝ている間に高さ調節をするというのはなかなか器用だと思います。それで慣れていて安眠できるのでしたら変える必要はないと思います。
-
睡眠時間が長すぎることに弊害はあるのですか?
- 日中の活動が普通にできて、睡眠時間をとれるのであれば、その人の適正な睡眠時間ということで、よいと思います。
-
寝言を言っている家族を起こしたりしてはいけないですか。
- 寝言を言っているときはレム睡眠の時間ですから、睡眠が比較的浅い状態と考えられます。それまでに何時間か眠っていると、そこで起こされると目が覚めてしまって、そのあと眠れなくなるかもしれませんから、よほど腹にすえかねる寝言でなければ起こさない方がいいですよ。
-
「夢枕に立つ」とかいいますがそれはどういうことなのでしょう?
-
朝起きたときに手がしびれていて、ぶらぶらとするとすぐ治るのですが、大丈夫でしょうか。
- 手の位置、特に上に挙げて寝てしまったときなどはよく起こります。ぶらぶらしたりもんだりしてすぐに治るのであれば心配ないでしょう。
-
朝ベッドから起きたときに足の裏が何となく違和感があって、リウマチの検査もしても異常はなかったのですが、そういうのはどうして起きるのでしょうか。歩き出すとすぐに治ります。
- いわゆる朝のこわばりというのは手ばかりではなくて、足の土ふまずが突っ張るような感じで足に起こることがありますので、それでリウマチの検査をしてくれたのだと思いますが、そういう症状でないとすると、筋肉に血行が回復するまでの短時間の症状と思って大丈夫でしょう。
-
カラーの夢と白黒の夢と何か意味があるのでしょうか?私の夢は、空や海は青くて、雲は白くてとてもきれいです。
- 夕べもその話題が出ましたが、私にはちょっとわかりません。私自身は、思い出してもカラフルな夢は見ていないように思います。きれいな夢でうらやましいです。(会場は、私はカラー、私は白黒と様々な意見が出て盛り上がりました)
今回の旅行は、障害や難病を抱えた患者さんやその家族の方たちとの旅行でした。河口湖近くの富士桜莊に宿泊し、ぶどう園の観光などをして過ごしました。私は2日目の朝に一時間の講演をさせて頂きましたが、それ以外の時間は皆さんと一緒に過ごしました。皆さんが、とても明るく、元気な姿にこちらが勇気づけられるとともに、患者さんの持っているそのような力を引き出せるような医師でありたいと思いました。旅行を企画された関係者の皆様お疲れさまでした。
ホームへ