第23回 健康講座 基本健診の結果の見方と生活習慣病

基本健診の結果の見方についてはすでにこのホームページでも紹介しました(こちら第7回健康講座)が、今回はいわゆる生活習慣病に関するところに重点を置いて、検査結果の見方や今後の生活習慣改善の方策などについて解説します。

基本健診でわかること

生活習慣病とは

動脈硬化性疾患の重要性

生活習慣病と動脈硬化、脳卒中、心臓病、腎不全などとの関係は下図のようになります。


動脈硬化の起こりやすさ

本日のポイント

身長、体重

計算しましょう

身長体重からは肥満度がわかります。現在の体重を知り、減量の目標としましょう。

肥満の基準

BMIの意味:生活習慣病の発病率が上昇

血圧

血圧には上と下があり、収縮期血圧と拡張期血圧です。

病院で測る血圧は、自宅で測る血圧より高めになりますし、健診の時はいろいろな検査がありましたので緊張もされていたと思います。その分は差し引いてもよいと思いますが、自宅での血圧も、 収縮期血圧140以上、あるいは拡張期血圧90以上であれば高血圧と考えられます。

140と90が基準となった理由は、日本で血圧と脳梗塞の関係について1960年代から行われた疫学調査(久山町研究)の結果、血圧の高い人ほど脳梗塞になりやすく、脳梗塞の頻度が増えるのが血圧140、90を越える人たちだったというデータなどに基づいています。

高血圧と脳卒中

1980年厚生省基礎疾患調査対象者1万人を14年間追跡調査:血圧が高いほど、年齢が高いほど脳卒中死亡率が高い

高血圧と痴呆症

高血圧コントロールの目標

では、高血圧の人はどのくらいに血圧を下げたらよいでしょうか。高齢者の場合はあまり下げすげてもよくありません。また、糖尿病のある人ではより厳重に下げた方がよいことが知られています。以下のような目標が提唱されています。

収縮期血圧 拡張期血圧
若年、中年、糖尿病患者 130以下 85以下
60歳代 140以下 90以下
70歳代 150〜160以下 90以下
80歳代 160〜170以下 90以下

しかし、最近のアメリカの研究結果では、年齢に関係なく、血圧は120/80を目標に下げるべきだという報告もあり、今後この基準も変わる可能性もあります。

総コレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪

高脂血症という病名には、高コレステロール血症と、高中性脂肪血症の2つが含まれます。

高コレステロール血症はなぜ問題か

悪玉コレステロールは以下のように計算します。

では、コレステロールはどのくらいだったら“高い”ということになるのでしょう。以下のような基準が2001年の動脈硬化学会で提唱されました。

高コレステロール血症 240以上
境界域高コレステロール血症 220以上
高LDL血症 160以上
境界域高LDL血症 140以上
低HDL血症 40未満
高中性脂肪 150以上

高コレステロール血症の治療目標値

コレステロールが高いとわかり、治療をはじめたら、どのくらいまで下げるのがよいのでしょうか。それについても2001年の動脈硬化学会で試案が提唱されています。すでに狭心症・心筋梗塞など冠動脈疾患を持っているか、糖尿病があるかないか、年齢、高血圧があるかないか、喫煙習慣があるかどうかなどによって異なります。総コレステロール240以下、200以下、180以下、または、LDLコレステロール160以下、120以下、100以下と、治療目標が異なります。個々の患者さんについては外来で詳しくお話しいたします。この基準について、詳しくは日本動脈硬化学会のホームページの高脂血症治療ガイドラインのページ(こちら)を参考にしてください。

しかし、この治療目標値についてはまだ問題点がいくつかあると思います。年齢が考慮されていないいこともひとつです。また、この基準は、6年間の調査データをもとに作られていますが、6年ではまだ短いようにも思います。また、コレステロールの下げすぎについて、一部新聞などはやや騒ぎすぎの感もあるようにも思いますが、本当にそういう心配はないのかまだ十分解決していない、などの点です。今後もこのような基準は変わる可能性がありますので皆さんの治療には慎重を期して当たらせていただきたいと思います。

糖尿病とは

血糖

糖尿病はなぜ問題か

HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)とは

糖尿病患者さんの場合の治療効果判定基準(日本糖尿病学会編、糖尿病治療ガイドより)

以下のような基準があります。優または良を目指して治療を進めていきましょう。

コントロールの評価 不可
HbA1c値 5.8未満 5.8〜6.5 6.6〜7.9 8.0以上
空腹時の血糖値 100未満 100〜119 120〜139 140以上
食後2時間の血糖値 120未満 120〜169 170〜199 200以上

高血圧、高脂血症、糖尿病を改善させることの重要性

生活習慣病は生活習慣だけが原因?

ブレスローの7つの健康習慣

  1. 適正な睡眠時間
  2. 喫煙をしない
  3. 適正体重を維持する
  4. 過度の飲酒をしない
  5. 定期的に運動する
  6. 朝食を毎日食べる
  7. 間食をしない

毎日の食事の要点

運動による降圧効果

運動強度

ウォーキングの実際

生活習慣改善の効果のまとめ

その他の検査

尿検査
・ 尿蛋白陽性の場合:腎臓障害の可能性。
・ 尿糖陽性の場合:糖尿病の可能性
・ ウロビリノーゲン陽性の場合:肝障害の可能性(正常は±、または正です)
・ 尿潜血陽性の場合:腎臓障害、腎臓・尿管・膀胱で炎症、結石、腫瘍などの可能性。体質的なものの場合も多い。
・ いずれも1回だけでははっきりしないので、再検の必要があります。

白血球数
・ 正常より多い場合:風邪、気管支炎、腸炎などの炎症のある場合。極端に多い場合は血液疾患の可能性もある。
・ 正常より少ない場合:もともと少な目の場合は心配なし。そのほか、膠原病、ウイルス感染症、薬の影響なども考えられる。
・ 前回との比較も大切。

赤血球数・血色素・ヘマトクリット
・ 正常より多い場合:多血症という病気の場合もあるが、あまり心配はいらない
・ 正常より少ない場合:いわゆる貧血。最も多いのは鉄欠乏性貧血。女性では生理の量が多い、不正出血があるなどの場合におこる。慢性的な出血(胃潰瘍など)があっても貧血になりますのでさらに詳しい検査を受けましょう。
・ 医学的な貧血という言葉と、一般によくいわれる脳貧血(貧血を起こして倒れた、などの場合)とは異なりますので注意してください。

GOTGPTZTT・γGTP
・ いわゆる肝機能検査。
・ GOT・GPTは肝臓の細胞が炎症などで損傷を受けると肝臓の細胞内から血液中に出てくる。
・ γGTPはアルコール、胆石、脂肪肝などで上昇。GOT・GPTも上昇していたら要注意。
・ ZTTは慢性肝炎、肝硬変で上昇することがあるが、慢性炎症、多発性骨髄腫などでも上昇する。
・ 正常より低い場合:病的なものではないので心配ありません。

尿素窒素・クレアチニン

・ 正常値より高い場合:腎臓障害の可能性。特にクレアチニンが高い場合は腎臓が悪い可能性あり。
・ 脱水状態でも高くなります。健診の日は朝から何も食べていないので、これらの数値は高くなりやすいので、もう一度調べた方がよいでしょう。
・ 正常より低い場合:病的なものではないので心配ありません。

尿酸

・ 尿酸が高い場合、痛風の可能性。
・ 尿酸値が8を超えると痛風発作を起こす危険ゾーン。
・ 痛風の治療中の方の場合、尿酸値が低くても発作を起こす可能性はありますので注意して下さい。

心電図

心電図の欄に何か所見が書いてあっても、特に心臓の働きには影響はないものもたくさんあります。たとえば、 不完全右脚ブロック、完全右脚ブロック、心室性期外収縮、上室性期外収縮なでです。程度にもよりますがこれらはあまり心配ないことが多いです。
しかし、 高血圧、糖尿病、高脂血症などがあって、心電図で心筋障害、心肥大などの所見がある場合は治療をしっかり続けましょう。

基本健診を受けたら

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