アルコール摂取量と脳卒中の関係

酒は百薬の長と言われますが、飲み過ぎが健康によくないこともまた明らかです。以前このホームページで心筋梗塞と飲酒量との関係の論文を紹介しました(こちら)。心筋梗塞だけに限って言えば飲酒量が多い方が心筋梗塞になりにくいという結果でした。しかし、肝臓への影響や自動車事故との関係などを考えれば決してアルコールを心筋梗塞の予防薬のように考えてはいけないことも述べました。

今回紹介する論文(Journal of American Medical Association2003年2月5日号、vol 289, p579-588)は、飲酒量と脳卒中の発症との関係を調べたものです。脳の血管が詰まるために起こる病気が脳梗塞、脳の血管が破けて出血して起こる病気が脳出血、両者をあわせて脳卒中と定義します。

1966年から2002年までの行われた疫学調査のうち、飲酒量と脳卒中、脳出血、脳梗塞の発症との関係がわかる調査35をまとめたものです。

その結果、一日60g以上のアルコールを摂取していると脳卒中全体の発症率は増す傾向が認められました。脳梗塞については一日12g以下の摂取量では逆にやや発症率が高い傾向がありました。アルコール摂取量と脳梗塞、脳卒中の発症率を図に示すと以下のような関係になります。

この結果から、脳梗塞については、少し飲んでいた方がよいが、飲み過ぎは脳梗塞、脳出血いずれの危険性も増すということになります。少量の飲酒が、脳梗塞に対して予防的に働くのは、適量のアルコールが、善玉コレステロールを増やすことなどが原因と考えられます。

ちなみに60gのアルコールというのはビールでは997ml、日本酒では488ml、ワインでは558ml程度、です。

酒は百薬の長”の後にこう続くそうです。”なれど、よろずの病は、酒よりこそ起これ”(兼好法師)。やはり適量を守ることが大切なようです。

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