ダイエットがもたらす気分の変化

ダイエットのためには、低炭水化物食でも低脂肪食でもあまり効果に差はないということは以前、このホームページでも紹介したことがあります(こちら)。今回紹介する論文は、ダイエット食が気分の変化や認知機能の変化に与える影響に関するものです。

Archives of Internal Medicine誌2009年11月9日号(169(20): 1873- 1880)に掲載されたものです。オーストラリアで行われた研究です。平均年齢50.0歳の肥満男女(平均BMI 33.7)、106名を対象に行われた研究です。対象者は低脂肪(炭水化物46%、蛋白質24%、脂肪30%)または低炭水化物(炭水化物4%、蛋白質35%、脂肪61%)のカロリー制限食(1433〜1672 kCal)のダイエットの2グループに分けられ、ダイエットを継続してもらい、1年間にわたって体重の変化、気分の変化、認知機能の変化を記録しました。気分の変化は、総体気分障害、怒り・敵意、混乱・当惑、うつ・落胆などの項目について、それぞれをスコア化する質問票によって記録しています。また、認知機能については、記銘力(昔の記憶ではなく、新しいことを憶える記憶力)、仕事のスピードなどの項目を評価しています。

結果は、いずれのダイエットのグループとも、体重は平均13.7kg減っており、両グループ間に差はありませんでした。しかし、気分の指標である、総体気分障害、怒り・敵意、混乱・当惑、うつ・落胆の4項目は、いずれも低脂肪食でダイエットした人たちの方がよくなっていたというのです。認知機能については両グループ間で差はありませんでした。気分の指標がよくなったといっても、観察期間中、常に正常範囲にはおさまっていました。つまり、ひどいイライラが低脂肪食で治ったとか、そういうことではありません。

このような違いが生じた理由についてはいろいろな仮説があるようです。低脂肪がよかったというより、炭水化物を減らさなかったのがよかったということのようです。脳では、その活動にはブドウ糖だけがエネルギー源になります。炭水化物を制限することによって、ブドウ糖が減り、脳でのエネルギー源が大幅に減ってしまったことが考えられます。ただ、実際には炭水化物を制限して低血糖(血液中のブドウ糖が低くなってしまうこと)になった人はいませんでしたので、これだけが理由ではないでしょう。脳内のセロトニンや神経伝達物質への影響なども考えられているようです。

様々なダイエットがありますが、ダイエット開始直後の空腹感によるイライラなどは多くの人が経験するようです。そういうことも考えると、低炭水化物でダイエットするより、低脂肪を心がける方が気分的にも楽に続けられるかもしれない、ということは言えるかもしれません。

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