第11回健康講座 脂肪について

今回は、コレステロール、中性脂肪について、相互の関係と脂肪酸について解説します。

混じり合わないものをたとえて”水と油”といわれますが、コレステロールも中性脂肪も油であるため、そのまま血液に溶けているわけではあません。実は、アポ蛋白という蛋白と一緒になって血液に混じり合うようになっています。コレステロール、中性脂肪、アポ蛋白が一緒になったものがリポ蛋白です。

リポ蛋白には大きく分けて次の4種類があります。

  1. カイロミクロン
  2. VLDL
  3. LDL
  4. HDL

いずれもコレステロールと中性脂肪を含んでいますが、カイロミクロンとVLDLは中性脂肪の方が多く、LDLとHDLはコレステロールが多いのが特徴です。後述するように、LDLは悪玉といわれ、血管にくっついて動脈硬化の原因となります。HDLは善玉といわれ、血管に付いたコレステロールを肝臓に運んで行ってくれる働きがあります。

ここで、コレステロールの働きについておさらいしておきたいと思います。

コレステロールの働き

善玉コレステロールと悪玉コレステロールとはなんでしょう

  1. 善玉コレステロールとは:HDLのこと
  2. 悪玉コレステロールとは:LDLのこと

では、中性脂肪とはどんなものでしょうか

脂肪酸とはどんなものでしょうか

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にはどんな特徴があるでしょう

1 飽和脂肪酸

2 一価不飽和脂肪酸

3 多価不飽和脂肪酸

各種油脂類の脂肪酸組成はどうなっているかというと以下のようになっています。(参考文献(1)より)

油脂 飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸
オリーブオイル 13.1 75.7 11.2
ごま油 15.1 39.4 45.4
サフラワー油 9.9 13.4 76.6
調合サラダ油 8.9 50.0 41.1
コーン油 13.3 34.7 52.0
ひまわり油 10.4 19.0 70.6
マーガリン 22.7 41.4 34.7
バター 68.8 27.9 3.3
牛脂 47.8 48.5 3.6

では、これら三種類の脂肪酸をどんな割合でとるのがいいかというと、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸のバランスは1: 1.5:1が望ましい、といわれています。毎日の食生活で脂肪酸の割合まで気にしていてはかえって複雑になりすぎます。飽和脂肪酸は比較的とりやすいので、多価不飽和脂肪酸を多くとることを意識するのがいいと思います。

多価不飽和脂肪酸の代表は魚の脂であるEPA、DHAです。

魚の脂についての特徴は以下のようなものです

種々の魚に含まれるEPAとDHA(食材100gに含まれる脂肪酸量(g))(参考文献(2)より)

EPA DHA
さば 0.9 1.6
にしん 0.7 0.9
まぐろ 0.3 1.0
さけ 0.8 0.6
たら 0.1 0.4
かれい 0.1 0.1
ます 0.1 0.4

このような魚にEPA、DHAが多く含まれています。

魚の脂(ω3脂肪酸)がよい理由

魚の脂の臨床効果

実際に人がさかなを多く食べたときの効果には以下のようなものがあります。

魚の脂についての最新論文

すでにこのHPでも紹介したもの(こちら)ですが、84,688名の34歳から59歳の看護婦さんたちを対象に16年間追跡調査したものです。冠動脈疾患の発生とω3脂肪酸の摂取量との関連を検討しています(参考文献(3))。

データの一例ですが、魚を食べる機会が月1回以下の人の冠動脈疾患発生率を1.0としたときの相対的な発生率を計算すると以下のようになったそうです。

月1回以下 月1〜3回 週1回 週2〜4回 週5回以上
致死的冠動脈疾患 1.0 0.80 0.65 0.72 0.55
非致死的冠動脈疾患 1.0 0.78 0.75 0.71 0.77

このように魚の効果が認められたのです。

まとめ

<参考文献>

  1. 五訂日本食品成分表
  2. Archives of Internal medicine, 161, 2185-2192, 2001
  3. JAMA2002, 287; 1815-1821

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