学校における児童へのインフルエンザワクチンの効果

以前、このホームページでも紹介した論文で、日本で過去に行われていた学校でのインフルエンザワクチンが、高齢者の死亡率を低下させる効果があったという内容のものを紹介しました(こちら)。その研究は、あとから振り返ってみて効果を検討したものですし、また、高齢者の死亡率に対する効果を検討したものですが、今回紹介する論文は、学校でインフルエンザワクチンを受けてくる子供がいる家庭の家族はインフルエンザにかかりにくいかどうかを検討したものです。

アメリカにおける研究でNew England Journal of Medicine 2006年12月14日号に掲載されました(New England Journal of Medicine 2006; 355: 2523- 2532)。研究は4つの州の11の集団で行いました。それぞれの集団の中の1校をワクチン接種校、1〜2校をワクチン非接種校としました。全体としてワクチン接種校では47%の学童にワクチンが接種されました。そして、インフルエンザの流行期に1週間ごとにインフルエンザにかかった家族がいるかどうかを調査しました。

その結果、発熱やインフルエンザ様症状が認められた家族(成人)はワクチン接種校で32%、ワクチン非接種校で44%、咳やのどの痛みの伴う発熱のあった家族(成人)はワクチン接種校で8%、ワクチン非接種校で13%だったそうです。あまり大きな差には思えないかもしれませんが、統計学的に計算するとはっきり差があるそうです。つまり、子供が学校でワクチンをうっている家庭の方がインフルエンザにかかりにくかった、ということがいえます。ただし、児童、家族の入院率については差はなかったそうです。

論説でも述べられていますが、この結果は、学童にインフルエンザワクチンを接種することによってインフルエンザの蔓延を減らす効果があるといえるでしょう。

確かに、統計学的には差があり、公衆衛生学的には大きな意味があるとはいっても、子供がワクチンをうってくれば家族はかからなくてすむというわけではありませんから、やはり皆さん一人一人が接種を受けるのがよいでしょう。

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