携帯電話と脳腫瘍のリスク、結論はまだ何とも言えないようで・・・

携帯電話からはごく微量の電磁波が発生しており、携帯電話の使用により、脳腫瘍の発生リスクが高まるのではないかということが以前から指摘されていました。電磁波や放射線はある程度の強さがあると、細胞のDNAを破壊し、細胞のがん化を促す恐れがあります。しかし、携帯電話から発生する電磁波はごく微量のため、その心配はないのではないかという意見と、一方で、はやり危険なのではないかという意見とがあります。疫学的調査でも、様々なデータが出ていますが、いずれも調査期間が短かったり、調査対象の人数が少なかったりと、携帯電話との因果関係を立証するには不十分なものでした。一例はこのホームページでも以前に紹介したことがあります(こちら)。

今回紹介する論文は、これまでで最も長期間で、症例数も多い研究の結果をまとめたものです。International Journal of Epidemiology 2010; 1- 20に発表されたものです。

2000年から行われ、INTERPHONEと名付けられた研究で、日本を含む13か国で行われた共同研究です。30歳から59歳を対象に、脳腫瘍の中でも特に頻度の高いグリオーマと髄膜腫について検討されました。2,708人のグリオーマの患者さんと、2,409人の髄膜種の患者さんと対象患者さんについて、携帯電話の使用頻度を調査しました。その結果、通常の使用時間(月22.5時間)であれば、それらの脳腫瘍の発生頻度は上昇しないという結果でした。しかし、1,640時間以上使った人、すなわち、一日30分以上使う人では、グリオーマの発生が40%高かったという結果も出ています。この数字については、バイアスの可能性(すでに脳腫瘍になってしまった人に、どのくらい携帯を使ったかを聞いているので、携帯の使用時間を長めに申告する可能性がある、など)もあり、これだけで、携帯電話とグリオーマの因果関係が示唆されたとはいえない、ということだそうです。

ですから、ヘビーユーザーといわれるような人たちについてもっと詳しく調べてみると、もう少しはっきりと因果関係ありといえるような結果が出たかも知れません。また、この研究でも、ヘビーユーザーで脳腫瘍が発生した人では、携帯電話を使う側に腫瘍が発生している傾向は認められており、やはり因果関係は否定できないという意見もあります。また、この研究の問題点として、10代を中心とした若い世代が含まれていないという大きな問題があります。この点を解決するため、現在、若い世代を中心とした、プロジェクトが進行中だそうです。その結果を待ちたいと思います。

今できることとしては、携帯電話の使用時間をできるだけ短くする、ヘッドセットを使って話すようにするなどが考えられます。

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