インターネット膠原病教室

第1回 リウマチ患者さんによい食事

バランスの良い食事とは

特にとった方がよい食品は?

食事とリウマチの研究紹介

食事全般について

リウマチ患者さんのための食事にはどんなことに気をつけたらよいでしょうか。それにはまず、バランスよく、十分な栄養をとることです。まず、その点を解説します。そして、特にとった方がよい食べ物にはどんなものがあるでしょうか。また、食事の効果について、どんな研究結果がでているでしょうか。これらについて解説したいと思います。

バランスの良い食事とは

食べ物の栄養素は、大きく分けて、炭水化物(糖分)、脂肪分、タンパク質に分けられ、さらにビタミン、ミネラルなどが含まれます。これらを“バランスよく”、といってもなかなか難しいかもしれません。まず、簡単に説明します。次にちょっと詳しい説明をします。

食べ物をおおざっぱに、(1)ご飯、パンなどの主食、(2)肉、魚など、(3)野菜類に分けます。朝、昼、夕の毎食にこらら3群の食品が必ず含まれるようにするのです。ご飯はおかわりをするようだと糖分のとりすぎになります。軽く一膳にしましょう。また、ご飯をおかわりしたくなるような食事では、おかずである(2)、(3)が足りていないと考えましょう。よく、一日30品目の食材をとるのがよいなどといわれますが、できるだけそれを目標にしましょう。

もう少し詳しく説明すると、バランスの良い食事をとるための目安として便利なのが“糖尿病の食品交換表”ですので、これを使って説明します。“糖尿病食”と聞くとカロリーを抑えたダイエットのための食事かと思われがちですが、食事のバランスという点では大変優れていて、治療食というより“バランス栄養食”と考えた方がいいでしょう。この交換表では、食品を6つのグループに分け、それぞれを表1〜表6に分類します。表1、2は主に糖質を含む食品で、表1には穀類、芋などが含まれます。表2には果物が入ります。表3、4はタンパク質食品で、表3には魚介類、肉、卵、チーズ、大豆製品、表4には牛乳、乳製品が入ります。表5は脂肪で、油脂類です。表6はビタミン、ミネラル類で、野菜が中心です。一日のカロリーをバランスよく、どの栄養素を何カロリーとったらいいかを示したのが食品交換表なのです。

一例を示します。栄養量 2.000KCal(25単位)の場合です。

交換表 食品名 単位 数量 目安量
糖質 表1 ごはん 11.4 210x3 ごはん210g(茶碗 2杯弱)
(3.8x3) 1食分パン110g (8枚切り 約2枚)
うどん300g(1玉)
小麦粉・芋類 0.6 60 じゃがいも 卵大1ヶ
表2 果物 1 150 りんご 小1ヶ
蛋白質 表3 魚介類 2 160 白身魚 2切れ
肉類 1 60 牛・豚赤身肉うす切り1枚または、鳥肉皮なし小1枚
1 50 鶏卵 小1ヶ
豆腐 2 200 豆腐(もめん)1/3丁(100g)、納豆1パック(40g)
表4 低脂肪牛乳 2.6 400 2本
脂質 表5 油脂類 1.5 15 大さじ1と1/2杯
ビタミン・ミネラル 表6 野菜類 緑黄色野菜100g
きのこ 1 300 その他の野菜200g
海草
合計 24.7

総カロリーを2000カロリーとしましたが、一日の必要カロリーはどうやって計算するかというと、

標準体重x25〜30 として計算します。

標準体重は、身長(m)x身長(m)x22です。

従って、身長160センチの方の場合、まず、標準体重は1.6(m)x1.6(m)x22=56.3キロとなり、必要カロリーは56.3x25〜30=1408〜1690カロリーとなります。カロリーの幅があるのは、それぞれの患者さんの運動量、仕事量によって変わってくるからです。家事、事務的な仕事ではx25、外に出て活動されているような場合はx30とするのが一般的です。詳しくは、糖尿病の食品交換表を参考にして下さい。

やっぱりちょっと難しいですね。はじめに述べた、朝、昼、夕の毎食に(1)ご飯、パンなどの主食、(2)肉、魚など、(3)野菜類など3群の食品が必ず含まれるようにする、ということを心がけましょう。

特にとった方がよい食品

さらに、次の食品は意識してとるようにしましょう。

(1)ビタミンの多い緑黄色野菜

(2)カルシウム

牛乳、乳製品、小魚、しらすぼし、大豆、卵黄、緑黄色野菜など。

ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。乾し椎茸、マグロの刺身、いわし、かつお、レバ−、卵黄、さつま揚げなどに含まれます。

マグネシウムを同時にとることも重要です。小海老、いわし、しらうお、なし、バナナ、グレ−プフル−ツ、ア−モンド、落花生、クルミ、アスパラガス、いんげん豆、キュウリなどに含まれます。

(3)魚

魚の脂、特にイワシ、サバなどに含まれる脂はリウマチ、膠原病にはよいと考えられています

食事とリウマチの研究紹介

リウマチ、膠原病に対しての食事の効果については多くの研究がありますが、なかなか一定の見解が示されるものはありません。ある研究者は・・がいい、と言って、他の研究者が同じ研究をしても同じ結果とはならない、ということがあります。しかし、ある程度正しいと認められているものがあります。それは、オリーブオイル、魚の脂の効果です。もちろんこれらによって、リウマチが治るとか、薬が要らなくなるというわけではありませんが、補助的な治療の一つと考えてもいいと思います。

オリーブオイル、魚について

オリーブオイルや魚の脂がリウマチに対してよい効果があることは以前から報告されています。その中の一つを紹介します(Scandinavian Journal of Rheumatology 1991, 20, 419-426)。

慢性関節リウマチの患者さん168例と健常人137例について、日常生活上の様々な習慣について聞き取り調査をしました。その中でリウマチの患者さんにはどんな生活習慣が関係しているか、また、それはリウマチの重症度とは関係があるかを検討しています。聞き取り調査の項目は、年齢、性別、職業、居住地、結婚、BMI(肥満度)、lentという宗教上の習慣、以下の食材についての摂取量:オリーブオイル、肉、魚、乳製品、動物性脂肪、植物性脂肪、野菜、シリアル、果物、ナッツ、ケーキ・デザート類、ソフトドリンクなどです。

その結果、統計学的に差があると判定された項目は

(1)オリーブオイルの摂取量は慢性関節リウマチの発症、及び重症度と関連があった。

オリーブオイルの摂取回数を、月に6回以下から月30回以上(毎日)まで5段階に分け、リウマチの患者さんと健常人とを比較したところ、リウマチの患者さんはオリーブオイルの摂取が少なく、健常人は多い傾向が見られた。

(2)魚の摂取についても慢性関節リウマチの発症、及び重症度と関連があった。

魚の摂取回数を月1〜2回、4〜10回、12回以上の3段階に分け、同様の比較を行ったところ、リウマチの患者さんは魚の摂取が少なく、健常人は多い傾向が見られた。リウマチの患者さんについてさらに検討すると重症な人ほど魚の摂取は少ない傾向が見られた。

(3)Orthodox lentという宗教上の習慣と慢性関節リウマチの発症、及び重症度と関連があった。

この習慣はキリスト教の教えに基づき、クリスマス、復活祭の前後、ならびに水曜日と金曜日に、肉や動物製品(乳製品を含む)をとらず、主として野菜、フルーツ、シリアル、植物性脂肪を摂取することになっています。リウマチの患者さんではこの習慣を持っている人が少なく、健常人には多い傾向が見られた。リウマチの患者さんの中では重症な人ほどこの習慣は少ない傾向が見られた。

以上のような結果が得られています。オリーブオイル、魚の脂がリウマチや膠原病の発症に予防的に働くということは動物実験でも証明されています。炎症を起こす物質のプロスタグランジンはアラキドン酸という物質から作られますが、オリーブオイルや魚の脂はアラキドン酸と構造がよく似ているため、体の中のアラキドン酸が置き換わると、プロスタグランジンの作られる量も減り、炎症も軽くなるのだろうと考えられています。

以前、ホームページ上でコーヒーとリウマチの関係についての論文を紹介しました(こちら)。また、喫煙もリウマチの発病と関連があるのではないかといわれています。ですから、これらの生活習慣に関するデータからは、タバコは吸わず、コーヒーも飲まず、肉類は控え、オリーブオイルや魚を多く摂るようにする、という食習慣がリウマチには予防的効果があるのかもしれないとはいえるでしょう。患者さんからよく聞かれる、リウマチによい食事ってあるんですか?という質問に対する答えになるかもしれません。しかし、リウマチの患者さんがこのような生活習慣を取り入れることにより、リウマチが治るとか、よくなるかといったことについてはまだわかっていません。これからの研究の成果に期待したいところです。

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