健康によい肉とは

食事の蛋白源として、牛肉や豚肉などの肉よりも魚の方が健康によいということはよくいわれることです。その根拠としては、動物性脂肪が動脈硬化予防の点ではよくないことや、肉に含まれる微量の発がん物質などが挙げられています。しかし、実際に食生活と疾患、あるいは死亡率との関係を調べた研究というと限られていて、たとえば、いわゆるベジタリアンの人たちを追跡調査した報告などがあります。しかし、ベジタリアンの人たちは肉を食べないだけでなく、食物繊維を多くとっていたり、抗酸化物質も多くとっていたりしていて、得られた結果は肉の影響だけで説明のつくものではありませんでした。今回発表された研究は、50万人規模の疫学調査で、肉としてどんな肉をとっていると死亡率に影響が出るのかということを検討しています。肉の種類は、赤肉(牛肉、豚肉など、ハンバーガー、レバーなどを含む)、白肉(魚、鶏肉など)、加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)に分け、その摂取量と死亡率について検討してます。

Archives of Internal Medicine 2009年3月23日号(2009; 169 (6): 562- 571)に発表されました。

アメリカで行われた研究で、50〜71歳の男性322,263人、女性233,396人を対象に10年間の追跡調査を行ったものです。食事内容については、食材124品目をどのくらいの量をどのくらいに頻度で食べているかというアンケート調査を行っています。10年間に、47,976人の男性が、23,276人の女性が何らかの原因で亡くなっています。死亡原因をがん、心血管系疾患(心筋梗塞や脳卒中など)、外傷、突然死、その他に分けて検討しています。肉の摂取量は、食事のカロリー1000kcalあたりのグラムで5段階に分けています。

その結果を、5段階で摂取量の最も少ない人たちと比較して、最も摂取量の多い人たちの死亡率のハザード比で表しています。

主な結果を下記の表に示します。

男性 女性
総死亡 赤肉
1.31
1.36
加工肉
1.16
1.25
がん 赤肉
1.22
1.20
加工肉
1.12
1.11
心血管系 赤肉
1.27
1.50
加工肉
1.09
1.38

男女ともに赤肉、加工肉をたくさん食べている人は総死亡、がん死亡、心血管系死亡が20〜30%多いということがわかります。そして、白肉では統計的な差は出ませんでしたが、逆の傾向、つまり白肉は多く食べている人の方が死亡率が低い傾向が認められました。その他の死亡ではそれ程大きな差は認められませんでした。

赤肉をたくさん食べている、というのはどのくらいかというと、食事1000kcalあたり68.1グラム以上をさします。5段階で最も少ない摂取量は、食事1000kcalあたり9.3グラム以下でした。

赤肉が発がんに関係するメカニズムとしては、肉に含まれる微量の発がん物質や高温で調理することによって形成される発がん物質などが関係するのではないか、赤肉に含まれる鉄分が発がん物質の形成にかかわるのではないか、あるいは、乳がんや大腸がんではいわれていることですが、飽和脂肪酸が発がんい関係するのではないかなどといったことが推測されています。また、心血管系疾患との関係では、赤肉や加工肉の摂取が増えると血圧が上がる傾向がみられること、脂質への影響などが考えられています。

これらの結果は、がん予防国際プロジェクトが推奨する「がん予防14か条」の第7条、「牛肉や豚肉の量は一日80グラム以下にする」にも合致する結果となりました。(当院の健康講座(こちら)でも取り上げたことがありますので参照して下さい。)

赤肉には蛋白質は豊富ですし、調理も難しくないという利点もありますから、まったく食べないというのは行きすぎかもしれませんが、蛋白源として、大豆製品などの植物蛋白や魚からも摂るよう心がけてみるがいいのかもしれません。

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