糖尿病

検診で糖が出ているといわれたが、何にも症状はないんだけど・・・

糖尿病は増えている?

糖尿病は怖い病気なの?

治療はどうなりますか?

薬は、飲み始めたら一生飲むの?

インスリンの注射になったら、一生注射なの?

どのくらいまで血糖は下げるの?


糖尿病は症状のない病気です。

糖尿病患者さんの体の中ではいろいろなことが起こっていますが、その中で我々が捉えることのできる異常値が、血糖値や尿糖なのです。血糖が高い、尿糖が出ているといわれたら、すぐに詳しい検査を受けましょう。もし、のどの渇き、多尿、だるさなどがあれば糖尿病の症状の可能性があります。年のせい、疲れがたまっているなどと思っていたら、糖尿病の初期だった、ということもよくあります。

このページのトップへ


糖尿病は増えている?

糖尿病の原因は、まだわかっていないことも多いのですが、糖尿病の中で最も多いタイプの糖尿病について述べましょう。

まず、体の中のインスリンというホルモンの、体の中での効きが悪くなってきます。そうなると体の方はインスリンをもっと出すようになります。それで何とかバランスをとっています。インスリンはどこから出ているかというと膵臓から出ています。インスリンは体の中の糖の調節をしています。この段階ではまだ血糖が上がったり、尿糖が出たりはしません。

体の中でのインスリンの効きが悪く、その分、インスリンがたくさん出ているというバランスが崩れると、糖の調節が崩れ、血糖値が上がり、余分な糖が尿中に出てきます。余分なものは尿に出ているんだからいいんじゃないか?と思われるかもしれませんが、そうではないのです。尿中に出ていってしまうほど体の中であふれている、ということなのです。

では、インスリンの効きが悪くなるというのはどういうことでしょう?

インスリンの効きが悪いことを“インスリン抵抗性”と呼んでいます。体がインスリンに対して鈍くなってしまうことをさします。

最近の医学の進歩でわかってきたことですが、運動不足、肥満、喫煙、ストレスなどがインスリン抵抗性を増やす、つまり、インスリンの効きを悪くするといわれています。

運動不足、肥満、喫煙、ストレス・・・

昭和の初期、明治時代、江戸時代を想像してみて下さい。車も電車もなく、食事は穀類と野菜が中心、たまに食べられるごちそうは魚。そんな時代に比べたら、現代がいかに、糖尿病になりやすい環境かおわかり頂けるでしょう。

1997年の厚生省の調べでは、40歳以上の10人に1人が糖尿病といわれており、最近増加傾向にあります。

このページのトップへ


糖尿病は怖い?

おどかすわけではありませんが、糖尿病は怖い病気です。血糖が高いことが怖いわけではなく、何年もその状態を続けることで起きてくる合併症が怖いんです。

どんな合併症が起こるかというと、視力低下(時には失明)、腎不全(透析が必要になることもあります)、手足のしびれ(感覚が鈍くなり、傷ができても気づかない)、心筋梗塞、脳梗塞、インポテンツ、壊疽(手足の先に血液が行かなくなってしまい切断しなければなりません)、意識障害などです。

ですから、糖尿病と診断されたら、真剣な治療が必要なのです。

このページのトップへ


治療はどうなりますか?

治療の第1は、運動不足、肥満、ストレス、喫煙などを解消することにあります。

すなわち、食事療法運動療法がまず必要です。そして肥満の方では、体重を標準体重に近づけましょう。

食事療法を始めると、空腹感でつらくなるかもしれません。しかしそれは、体にとってはよいことですので、空腹感を快感と思ってがんばりましょう。最初のうちは体重は減らないと思いますが、根気よく続けましょう。

運動も大切です。運動をするとカロリーを消費しますが、運動の目的はカロリーを消費して体重を減らすことにあるわけではありません。この辺が患者さんがよく誤解される点です。運動の目的は、先程述べた“インスリン抵抗性”を改善することなのです。ですから、運動の効果はすぐには感じられませんが、続けることによって確実な効果が得られます。合併症のある場合は運動はよくないこともありますので主治医によく確認して下さい。

次に薬物療法です。薬にもいろいろなものがあり、患者さんの状態に応じてこれらを組み合わせて使います。

このページのトップへ


薬は、飲み始めたら一生飲むの?

インスリンの注射になったら、一生注射なの?

患者さんが最も心配されることでしょう。

食事、運動療法だけでもかなり効果が上がる人がいます。その場合は、一時的に薬を使っても徐々に薬の量が減り、やめることも可能です。でもそれは、糖尿病が治った、のとは違いますから、食事、運動療法は続け、定期的な検査は受けて下さい。

インスリンの注射が必要な場合に2通りあります。一つは、インスリン依存型糖尿病というタイプです。このタイプの糖尿病の人は糖尿病全体からみると非常に少ないですが、このタイプの方は残念ながら一生インスリンが必要です。そのほかの場合でインスリンを使うこともあります。飲み薬の効きが悪くなってきたような場合です。先ほど、インスリンは膵臓から出ていると述べましたが、糖尿病の飲み薬は、膵臓を刺激してインスリンを出させる薬なのです。ですから、この薬を飲んでも、血糖が高い状態が長く続くと、膵臓が疲れてきて、インスリンを出せない状態になってしまうのです。そうなると、インスリンを補うしかないわけです。つまり、インスリンの注射が必要なわけです。では、それをいつまで続けるかということですが、インスリンの注射をしているうちは膵臓は休めるので、徐々に膵臓の働きは回復してきます。そうするとインスリンの注射はいらなくなります。もちろん、食事、運動療法がうまくいっていることが前提です。また、インスリンもできるだけ少なくて済むように、飲み薬を併用することもあります。数ヶ月、インスリン療法を行い、再び飲み薬に戻す、ということを目標に治療します。ですから、インスリンになったからといっても、一生注射というわけではありません。

このページのトップへ


どのくらいまで血糖は下げるの?

食事、運動療法、そして薬やインスリンによって血糖は下がってきます。

血糖が下がってきたかどうかを、血液検査ではHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という項目で検査しています。血糖値は食前、食後で大きく変動しますので、採血した時間や食事の内容によって大きく変動します。HbA1cは1ヶ月間の血糖値を反映するといわれています。正常値は5.8%未満です。糖尿病の患者さんでは高くなります。HbA1cが高いほど血糖値は高い状態が続いていて、それだけ合併症も起こりやすいといえます。

では、HbA1cが下がることで合併症は減らせるのでしょうか、そしてどこまで下げておけばいいのでしょうか。その答えとなるのはUKPDSというイギリスの大規模臨床調査があります。これによるとHbA1cを1%減らすことにより合併症が減らせることが証明されました。さらに、高血圧を合併している患者さんでは収縮期血圧を10下げることも合併症を減らす効果があることを証明しています。また、KUMAMOTO Studyという日本の研究ではHbA1cが低いほど糖尿病のコントロールはよく、合併症もおこりにくいわけですが、どこまで下げればよいかというと、6.5%と結論づけています。HbA1cが6.5%以下の人は合併症をおこしにくく、それ以上になると、HbA1cが高ければ高いほど合併症をおこしやすくなります。

ですから目標は、HbA1c を1%でも下げ、6.5%以下を目指すということになります。

早期発見で、よい状態を保てば、合併症の起こらない健康状態を保つことができます。

このページのトップへ

ホームへ