タバコについて、小学生に知っておいてほしいこと
タバコは健康に及ぼす影響が大きく、しかも、一度吸い始めて習慣性になってしまうとやめられないものです。これから大人になる小学生の皆さんには、タバコの害を知ってもらい、喫煙習慣をつけるようなことのないようにしてほしいと思います。
タバコの健康に及ぼす影響はたくさんあります。
- タバコは動脈硬化を進めます
- 動脈が硬くなり、血液の流れが悪くなり、血管が詰まってしまう原因となります。血管が詰まると、脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などといった病気になります。
- 脳梗塞になると・・・体の麻痺が残ったり、痴呆症の原因となったりします。
- 心筋梗塞になると・・・突然の胸の痛みに襲われ、息切れやだるさの原因となり、時には死につながることもあります。
- 閉塞性動脈硬化症になると・・・足の血管が詰まり、“壊疽”(えそ)といって、足の指先が腐ってしまい、時には切断しなければならない事態になります。
- 慢性気管支炎、肺気腫などの原因となります
- 肺は体に必要な酸素を取り込む大切な臓器です。その働きが悪くなると、息切れの原因となり、肺炎にもなりやすくなります。
- 様々ながんにかかりやすくなる原因ともいわれています
- 多くのがんについて、非喫煙者に比べ、喫煙者のほうががんになりやすいことがわかっています。たとえば、非喫煙者に比べ喫煙者では、肺がんにかかる頻度が4.5倍、胃がんや膀胱がんでもそれぞれ1.5倍、1.7倍、タバコの煙が直接触れる咽頭(のどの奥)がんに至っては32.5倍といわれています(参考文献1)。
タバコはなぜやめられないか
タバコの作用は、タバコに含まれるニコチンの作用です。ニコチンには鎮静作用と興奮作用があるといわれています(参考文献2)。つまり、イライラしているときは気持ちを静め、眠くなると目を覚ましてくれる作用があるといわれています。しかし、その身体的作用はそれほど強いものではなく、たとえば、緊張して上がっていた心拍数が下がるとか、1本のタバコで眠気が解消するといったものではありません。ある科学者は、本当はそんな作用はなく、喫煙者がみんなそう思いこんでいるだけで、ニコチン中毒のあらわれに他ならないとも指摘しています(参考文献3)。
喫煙が習慣化していく過程
- 初喫煙 :多くの人の場合、初めての喫煙は好奇心、友人の勧めなどがきっかけです。それをおいしいと感じる人はほとんどいません。
- しかし、それが、2本目、3本目となっていきます。すでに中毒が始まっています=散発的喫煙
- 気がつくと毎日何本か吸うようになっています。こうなるとタバコがないといられなくなってしまいます=習慣的喫煙
- 次に、タバコの本数がだんだん増えていきます。今まで10本で満足できたものが、15本、20本と増えていきます = 耐性の形成
- さらに、タバコがなければいられなくなる状態になってしまいます=依存的喫煙。こうなると完全に中毒状態です。
- 禁煙しようとすると離脱症状(いわゆる禁断症状)が現れ、禁煙を難しくしてしまいます。禁煙を続けるのが困難な理由のひとつがこの離脱症状にあります。しかし、実際にはこの離脱症状の原因は、ニコチン依存によることもわかっており、それを和らげるための薬もあり、禁煙のつらさを和らげることもできるようになっています。また、この離脱症状は、心理的な要素が多く、禁煙を始めるにあたってのきっかけや、タバコの害に対する理解がしっかりしていればそれほど苦しくないとも言われています(参考文献3)。
喫煙習慣は薬物中毒と同じ?
薬物中毒との共通点
- 徐々に本数が増え、やめられなくなっていく
- 体に悪いとわかっていてもやめるのは困難
このように、喫煙は、麻薬や覚醒剤などの薬物中毒となんら変わるところはありません。ただ、健康被害の種類が異なり、健康被害が出るまでの時間が長く、薬物より手に入りやすいという点が異なるだけです。
ですから、子供たちには、タバコに手を出すことなく、喫煙習慣をつけないようにしてほしいと思います。また、タバコのことを悪く言うと、吸っている身近な人(たとえば喫煙者である父親や、友達のお父さんなど)に悪いんじゃないか、つまり、子供たちがその人のことを軽蔑するようになるんじゃないかと心配して、子供たちにタバコのことを話しにくくなることもあるかと思います。しかし、喫煙者の人たちも、体に悪いことはわかっているのです。やめられるものならやめたいと思っているのです(タバコをやめるくらいなら死んだ方がましだ、などと言う人も中にはいますが、本当の気持ちではないでしょう)。ですから、むしろタバコを吸う人が身近にいたら、その人とも一緒にタバコについて話し合い、禁煙のきっかけになるように、また、吸っている人はやめるのがいかに難しいかを子供たちに話してあげてほしいと思います。そして、好奇心旺盛な子供たちに、決して面白半分にタバコを勧めたりすることのないようにしてほしいと思います。
(2003年2月28日、上福岡市立福岡小学校学校保健委員会での発表より抜粋)
<参考文献>
- 子供たちにタバコの真実を 37万人の禁煙教育から、平間敬文著、かもがわ出版
- タバコはなぜやめられないか、宮里勝政著、岩波新書
- 禁煙セラピー、アレン・カー著、KKロングセラーズ
当院のホームページでも喫煙を取り上げたことがあります。こちらも参考にしてください。