第21回健康講座 暑い夏を乗り切りましょう
夏は気温が上がり、紫外線も強くなるため体調を崩しやすくなります。夏の健康管理のポイントをご紹介します。
今日のポイントは次の5つです。
- 熱中症
- 脱水症
- 紫外線
- 食中毒
- クーラー病
暑さと体の変化
まず、気温が上がると身体にはどんな変化が起こるでしょう。
体温は36℃前後に保たれているわけですが、気温が上がると、皮膚温と外界温の差が小さくなり、熱放散量が減少します。つまり、熱がこもりやすくなり、体温上昇につながります。
気温が上がると、それに対して、皮膚表面で蒸発する発汗は熱を放散し、体温上昇を抑えようとします。しかし、蒸発しない汗は熱を放散しないため、湿度が高いと熱放散量は減ります。したがって、日本のように蒸し暑い夏には体温は上昇しやすくなります。汗をかくため水分も失われやすくなります。つまり、蒸し暑い夏には、体温が上がり、水分が欠乏しやすくなります。それがこれから述べます熱中症や脱水症の原因と関連があります。(参考文献1より)
熱中症について
熱中症とは
- 高温下で労働や運動をしたために起こる、水分、塩分の代謝失調によって起こるさまざまな症状。
熱中症が起きやすい条件(参考文献2より)
- 高温のときに起こることが多い。
- 気温 だけでなく、 湿度 、風速 、輻射熱 なども関与。
- たとえば、同じ気温でも湿度が高いほど熱中症は起こりやすくなる。
- 暑さになれていない場合にも多い。
- 梅雨の合間に突然気温が上昇した日や、合宿の初日などに起こりやすくなる。
熱中症予防のための運動指導基準(参考文献2より)
気温(乾球温) |
運動指導内容 |
35℃以上 |
運動は原則禁止 |
31〜34℃ |
激しい運動は禁止。運動する場合は積極的に水分を補給する。体力の低いもの。暑さになれていないものは運動中止 |
28〜30℃ |
積極的に休息をとり、水分を 補給する。激しい運動では30分おきくらいに休息をとる |
24〜27℃ |
熱中症の死亡事故が起こる可能性はある。熱中症の徴候に注意するとともに運動の合間に積極的に水を飲むようにする。 |
24℃未満 |
通常は熱中症の危険性は少ないが、適宜水分補給は必要。 |
熱中症の予防
- 気温、湿度の高い日は、外での運動や労働を避ける
- 水分の補給を十分に行う。
- 補う水分量の目安(野球などのスポーツの場合)
- 運動前に250〜500ml
- 1時間ごとに500〜1000ml
- 温度、運動量により調節
- 野外での作業(草むしりなど)の場合でも、上記の半分くらいの水分補給はしておきたいものです。
脱水症について
脱水症とは
- 体内の水分量が正常域を下回った状態
- 血圧の低下、頻脈などが起こる
- 血液の粘度の上昇=血液がドロドロ状態になる→血管が詰まりやすくなる
夏は脱水症に注意
- 高温では発汗量が増え、水分が欠乏しやすい
- 湿度が高い場合でも、蒸発しない汗が出るので脱水に陥る危険性は同じ
脳卒中、心筋梗塞は夏に多い?
- 脳梗塞の発生は、冬に比べれば7月から10月は少ないのが実際です。しかし、夏に限って言えば、高温多湿な時期に多いことが言われています。つまり、脱水になりやすい季節に多いと言うことがいえるかと思います。
脱水症の予防
- こまめに水分補給を
- 血液粘度の上昇は午前中に起こることが多く、猛暑下の脳梗塞の発症も午前中が多い
- 起床後に十分な水分をとることが重要(参考文献3より)
紫外線について
紫外線のよい点、わるい点(参考文献4より)
- よい点
- わるい点
- 皮膚のシミ、色素沈着の原因となる
- 皮膚がんとの関連もある
- 白内障との関連もある
紫外線による健康への影響
- 紫外線(UV-B)を多く浴びると、皮膚がん、白内障になる危険性が増える
- 夏の紫外線は1日15分も浴びれば十分。それ以上は悪影響の方が多くなる
紫外線には3種類ある
- UV-Aは人体に悪影響はなく、日焼けの原因となるだけです。
- UV-Cは地上まで届くことはありません
- UV-Bは本来はオゾン層で吸収されて地上にはごくわずかしか届きませんが、オゾン層の状態によってはかなりな量のUV-Bが地上に届きます
- 生体への影響の強い紫外線のうちUV-B がオゾン層の変化に影響されることから現在その増加が問題となっている
オゾン層の破壊
- スプレー、エアコン、冷蔵庫の冷媒、断熱材の発泡、半導体の洗浄などに使われるフロンにより、オゾン層が破壊されている
- オゾンの量は、20年前に比べ、北半球で3%減っている
- オゾンが1%減ると地上紫外線は1.5%増える
夏は紫外線に注意!
- 紫外線は、夏に強く、太陽が最も高くなる時間帯で強くなる
紫外線障害の予防
- しっかりした生地の服を着る
- 帽子をかぶる
- サングラス、UVカットの眼鏡を利用する
- 日傘を使う
- 日陰を利用する
- 反射してくる紫外線があるので注意
- 日焼け止めクリームを使う
日焼け止めクリームについて
いろいろな日焼け止めクリームが出回っていますが、選ぶ上で大事なのはSPFとPAという指標です。それぞれ次のような意味があります。
- SPF
- 日焼け止めを塗らなかった場合に比べ、日焼け止めを塗ると、同じ日焼けをするのに何倍の時間を要するかを示した数値。15以上がおすすめ。
- 数字が大きいほど紫外線を防ぐ効果が強い
- 1cm2あたり2mg塗った場合の効果を示している
- PA
- PA+:UV-A防御効果がある
- PA++ :UV-A防御効果がかなりある
- PA+++ :UV-A防御効果が強い
紫外線の健康被害を防ぐにはSPFは15以上、PAは++以上のものをしっかり塗ることが大事です。薄く塗ってはあまり意味がありません。また、耳の後ろ、首の後ろなどは塗り忘れが多い場所なので注意しましょう。
食中毒について
食中毒予防の3原則(参考文献5より)
- 「細菌をつけない」
- 「細菌を殺す」
- 「細菌を増やさない」
の3つが大原則です。
食中毒予防のポイント6(参考文献5より)
- 買うとき
- 生鮮食品は新鮮なものを選ぶ
- 食料品は最後に買い、買ったら寄り道をせず、早目に持ち帰る
- 保存するとき
- 持ち帰った生鮮食品は、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる
- 肉、魚、野菜などの食材はそれぞれ別々に保存
- 庫内は詰め過ぎないよう7割程度に
- 食品を保存する場合は必ず冷蔵(10℃以下)か冷凍(ム15℃以下)。冷蔵・冷凍で細菌が死ぬわけではない(冷蔵庫の過信にも注意)
- 保存した食品は食前に再加熱
- 下準備をするとき
- 食事の前、トイレのあとは忘れずに石鹸などを使って水道の流水で手をよく洗う。また、包丁、まな板、食器、ふきん類は清潔にしておき、なるべく熱湯消毒
- 肉、魚、野菜などの食材はそれぞれ別に洗う
- 野菜などの生ものも必ず水道の流水で洗う。水道水には蛇口部分で1リットル中に0.1mg以上の塩素が含まれるため殺菌力がある
- ゴミは菌の温床となるので、まめに処分
- 調理するとき
- 加熱して食べる食品は十分に加熱
- 目安は中心部の温度が75℃以上で1分間以上加熱すること
- ただしコロッケなどの加工食品では中心温度が75℃以上になるよう充分に加熱
- 食べるとき
- 調理したらすぐに食べ、室温で長く放置しないように
- O157は室温で15〜20分のうちに約2倍に増えるといわれています
- 残ったとき
- 清潔な食器で保存
- ちょっとでも怪しいと思ったら食べないで捨てる心がまえが大切(賞味期限などを参考に)
クーラー病について
クーラー病とは
- 部屋の冷やしすぎにより体が冷えたり、暑い屋外と、室内の温度差によって自律神経の失調がおこり、体の不調を来すものと考えられています
クーラー病の症状
- 倦怠感、食欲不振、頭痛、腰痛、冷え、腹痛、下痢、神経痛、生理不順など
クーラー病の予防
- クーラーの温度設定は27℃前後を目安に
- 外気温との差が5〜7℃以内に
- 設定 24℃以下にはしない
- 就寝時はタイマーなどを使い、かけっぱなしにしない あらかじめ寝室の温度を下げておき、就寝時には切る
- 冷風に直接あたらない。特に乳幼児。
- カーディガンなどを着用。
- 膝下の保温を心がける。
まとめ
いろいろご紹介しましたが、要点は次のようになるかと思います。
真夏の暑さで体調を崩すことなく、今年も夏を乗り切りましょう
<参考文献>
- 松本孝朗、菅屋潤壹:暑熱への適応、日本医事新報1998, 3893, 37-39
- 財団法人日本体育協会 スポーツ活動中の熱中症予防ハンドブック
- 日老医誌1999、36,565-571
- 紫外線保健指導マニュアル、環境省平成15年6月発行
- 日本医師会のホームページより
<当院のホームページの関連ページ>